IT業界では、2015年に登場したiPhoneの「ローズゴールド」あたりから、ピンクゴールドが広がっていますが、この流れが、2017年後半に海外PCメーカーに、2018年初めに日本の情報機器業界に急速に波及しています。
これまでピンクのIT機器はしばしば登場していますが、今回推されているのは通常のピンクではありません。iPhoneの「ローズゴールド」などが代表的ですが、金属の質感を持ったゴールドに寄った淡いピンク、すなわちピンクゴールドなどと呼ばれる色と質感です。2017年あたりから海外メーカーのノートPC本体に普及してきましたが、2018年に入って日本のメーカーからも多数登場するようになりました。
ピンクゴールドの製品で最も有名であり、今回のブームの源流と思われるのは、2015年後半のAppleのiPhoneやApple Watchの「ローズゴールド」でしょう。Appleらしい複雑な色合いで、他の色と並んでいればピンクとわかるのですが、単独で見るとゴールドとか茶色とも思える色合いです。単純なピンクだと場合によっては上品さに欠けるので、このような色合いにしているのでしょう。これが、後にタブレットのiPad ProやノートパソコンのMacbookへと波及しました。現在のノートパソコンにおいては、Appleが採用したアイソレーションキー(元祖ではもちろんありませんが)がメーカーにかかわらず席巻していたり、多くのメーカーのノートPCがMacbookもどきであったりと、Appleはデザインリーダーという側面があります。他のメーカーにはもう少し奮起して頂きたいところです。
このピンクゴールドは2017年ごろにはApple以外の海外メーカーに拡大しました。2017年前半にはDELLの14型ノートパソコンであるInspiron 14 7000に「ピンクシルバー」が追加され、ASUSのZenBook 3に「ローズゴールド」などが追加されました。さらに、2017年後半には、DELLからは13型ノートパソコンであるInspiron 13 7000 2-in-1の「ピンクシャンパン」(図「Inspiron 13 7000 2-in-1「ピンクシャンパン」」)などが、HPからは13型360°回転コンバーチブルノートPCであるHP Spectre x360(2017年11月モデル)の「ローズゴールド」(図「HP Spectre x360(2017年11月モデル)「ローズゴールド」」)が登場しました。なお、この流れよりやや早く、VAIO株式会社からVAIO S11(2016年11月モデル)で「ピンク」が登場しています。ただし、ピンクゴールドとは異なり、色合いは普通のピンクで、金属の質感は強くありません。
ピンクゴールドの流れは2018年の春頃に日本メーカーにやって来ることになります。VAIO株式会社から、VAIO S11(2018年春モデル)に「ピンク」が登場しています(図「VAIO S11(2018年春モデル)「ピンク」」)。2016年11月モデルとは異なり、キーボード面が金属製で通常のピンクとなっており、ピンクゴールドの特徴の金属質感は満たしながらも、色合いは通常のピンク寄りの色です。SONYの流れを組んでいる企業らしく、単に流れに乗るようなデザインはしないようです。純粋な日本メーカーとは言えないかもしれませんが、NECパーソナルコンピュータからもLAVIE Note Mobile(2018年春モデル)の「メタリックピンク」が登場しました(図「LAVIE Note Mobile(2018年春モデル)「メタリックピンク」」)。小型軽量など実用性を考慮すれば魅力的なモバイルノートPCであるのは確かなのですが、表面はプラスチックが主体でありメタリックな塗装で「メタリックピンク」を実現しているので、質感としては今回挙げた中では最もチープな印象です。
さらに、パナソニックからはマイクロフォーサーズ規格のミラーレス一眼であるDC-GF10W、DC-GF90W(流通チャネルが違うだけの同一機種)の「ホワイト」が登場しています。「ホワイト」を自称していますが、金属部分がピンクゴールドとなっており、ミラーレス一眼の世界にもピンクゴールドがやって来たことになります。
日本では、2018年春に桜の季節をイメージした商品展開でピンクゴールドが広がったようにも見えますが、実際には世界的な流行が遅れてやってきたと言えるでしょう。IT製品はグローバルに販売されるので、流行が遅れてやってくるなどということはあまりなさそうに見えるので不思議です。日本のメーカーは、近年、低価格化しているコンシューマ向けの製品が作りにくい状況なので、どうしてもデザインも保守的になってしまい、流行を取り入れられないのでしょうか。何にせよ、せっかくやってきたピンクゴールドのブームですから、ピンク系の製品を探している方は、この機会を大いに活用すると良いでしょう。